『緑茶すずしい太郎の冒険』週直日誌#8 「越寛生 インタビュー後編」

  こんにちは。(劇)ヤリナゲ『緑茶すずしい太郎の冒険』週直の中村です。

 ヤリナゲは本日、王子小劇場に小屋入りいたしました。今回は、主宰の越曰く「ヤリナゲにしては舞台美術がかなり入る」公演となっています。ぜひこちらで予約して、ご覧ください。初日、二日目は、チラシステージの「観劇モニター」を見せれば、前売り2500円で観劇可能です。(詳細はこちら

 今回は、(劇)ヤリナゲ主宰にして、『緑茶すずしい太郎の冒険』作・演出の越寛生インタビュー後編です。(前編はこちらです)

 演出家としての取り組み、作家としての興味、出演者への印象、など、様々なことを聞いています。ぜひお読みください。


(越寛生)

ーー今回、演出家として取り組んだことがあれば教えてください。

越寛生(以下、越):初演でやった時よりも、今は演出が違います。

昔は、演者に合わせて、セリフの強さをあまり強くしないようにしよう、投げられる球を用意しよう、という感じだったんですが、「強い球が投げられるぞ」って演出を、前回の『206』で行いました。『206』は、強い球を投げるための脚本を書いたんですけれど、2年前に書いた『緑茶』は、今改めて読むと球が全然強くないことに気づきました。その時は、強い球を投げるとつまんない、って思ってたんですよね。でも、今は、強い球を投げてもおもしろかったんだ、ってわかりました。だから、今回は、強い球を投げられる演出と、弱い球をなよなよ投げ合う脚本のハイブリッド、という感じになりました。

新たに書き直したところでは、強い球を投げ合っているところもありますので、そこもおもしろいと思います。

あとは、今回、新たに熱い花子のお母さんが出てくるんですね。初演の時の感想で、出産の話に、その人の親たちが絡んだ方が自然なのではないか、ということを言われて、それがなんとなくひっかかっていました。初演の時は、意図的に外部を排除しているところはあったんですけれど、 今回は、自分の言いたいことや主人公の軸がはっきりしたので、それを更にはっきりさせるために、母親を描けました。

ーーヤリナゲの公演ではありませんが、先日、越さんが短編の作・演出を行った、ヒヨコの神様の『いい加減に気付けお前は性格悪いんだ』の中の一編『スーサイド・イズ・リアリー・ペインレス』でも、作中で母親が印象的に登場していましたが、 現在の越さんは、母親や家族というテーマに興味が向いているのでしょうか?

:うーん…なんかある気がしますね。お母さんについて、というか、家族、というか。

ちなみに、『スーサイド・イズ・リアリー・ペインレス』を見て、お母さんはなんか嫌だったらしいです。それが結構今も残っています。

 あと、僕の家族にですね、引きこもりのおばさんがいるんですよ。その人が、今60歳くらいなんだけど、20代からずっと引きこもりだったらしくて、ずっと父方の祖母と住んでたんです。それで、僕の家族は正月に、おじいさんおばあちゃんおばさんが住んでいる亀戸のとても汚い家を訪ねてたんですけど、すげえ狭い居間にしか入れてくれなかったんですね。だから、子供心に、「この家はこの狭さしかないんだ」って思ったんだけれど、後に大きくなってから、おじいちゃんが亡くなって、それにともなって、おばあちゃんも年いってるから、自分たちの住む家の近くに引っ越してくることになったんですね。それで、その時に、引きこもっているおばちゃんがいたことがわかったんです。だから、正月に遊びにいった時にはずっと静かに家の中に潜んでたことがわかって、すごくびっくりして怖かったんです。

 おばあちゃんはすごい元気だったんだけれど、ちょっと最近元気がなくなってしまって、もし、おばあちゃんが亡くなったら、引きこもりのおばさんの世話を父母がすることになる。その次、僕のところにまわってくるのかな、とか、いろいろと考えてしまいます。

 あとは、僕の家は、弟がすごいゲーマーで、夜もずっとうるさかったんですよ。父母私弟といる中で、母が弟に注意する感じになって、弟ともめているのを見ていて、弟に対して「ちゃんと静かにしなさい」っていうのを言えなかった私と、ずっと弟の世話を見ていた母の様子を見ていて、とっても苦しいなあ、つらいなぁ、とか、何か私にできることがあるのではないかな、とか思っていました。でも、俺は俺で演劇とかやってるしなぁ…。

 今はそういうことに少し興味があります。

ーー今回の出演者について、それぞれの印象や手応えを教えてください。

:セキユさんは「持ってる」というか、地力があって、そのうえで彼自身ではコントロールできない部分が、たくさん出てくるんですけど、それが舞台上ですごく光っています。今回の役は、彼のそういうすごさが、とてもよくわかる役なんじゃないかしら。

浅見さんは、稲葉篤紀みたいというか、チームバッティングもできれば長打も打てるし、率先して課題に取り組んでみんなをリードしてくれる感じです。あとスタッフの女性陣から、セクシーだという評判を聞きます。

津枝さんは立ってるだけでおもしろいです。それがしゃべるもんだからとんでもなくおもしろいです。

伊岡森さんはウパー感がすごいです。あと足がすごいきれいです。

よっつん(編注:四柳のこと)は何考えてるのかよくわからんなあ。けどよい意味でとても気持ち悪いです。

あさきはすげえ苦手なことをやってるんだろうな、がんばってます。

國吉はかわいいです。

三澤さんは最強です。

ーー今回の意気込みをどうぞ。

:うーん、意気込みとか苦手なんですよ…。今日も、離任式だったんですけど、(編注…越はこの3月まで教師の仕事をしていました)みんな、なんかちゃんとスピーチとか喋れてて、だけど、それは多分みんなが色々あった末に身につけてきたものだと思うんだけれど、僕はそこで転んでしまったのかもしれない。ので、意気込みが苦手です。

けど、すごくおもしろい作品だと思います。客観的に、演劇として、お話としておもしろいという感じがある。かつ、僕が問おうとしている部分…思っていることと違うことを言っていること、についてが、割とストレートに出ているから、とてもわかりやすいと思います。その上で、その問いに共鳴する人は、わーおっ、って、きっとなると思うし、 共鳴しない人も「おもしろい」として楽しめると思うので、楽しいと思うよ。チケットが嘘みたいに売れていないから、いつでも来てください。

ヤリナゲ公演開始まで、いよいよあと2日になりました。

ご予約はこちらでお待ちしています。

明日は、公演直前なので、アフタートークや割引など、お得情報についてまとめさせていただきます。